最終更新日 12/14

一生涯大切に家族として暖かい愛情で包んでくださる里親さんを探しています!
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(「動物・自然保護」啓発団体) プ ラ ― ナ
本部事務局 078−302−5255 (代)
午前10時〜午後7時まで
※電話受け付け時間は当日の活動内容により異なる事も御座います。

(最新画像入れ替え '01/12/14)
| ユキちゃんはとても利口で繊細な子です。 でも一言で説明出来ない理不尽な流れに巻き込まれ翻弄されてしまいました。 本当のユキちゃんを知ってもらいたい、その一心から我々はユキちゃん特集を組むことにしました。 今までの非常にデリケートな経緯を伝えるため、ひとつの物語のようになってしまいましたが、どうかおつきあい願いたいと思います。 |
ユキちゃんは2001年1月に神戸で生まれました。 ユキちゃんの父犬の飼い主Sさんは、阪神大震災で被災してしばらく仮設住宅で生活しておられた方です。その頃、仮設住宅から復興住宅に移る際に置きざりにされる犬や猫が後を絶たず大変問題になっており、Sさんはそんな2匹の子犬を引き取って共に生活をするようになりました。 寂しい1人暮らしの中で犬達はSさんの心の支えになったであろうと思います。 またかわいそうな犬を放っておけない優しい心もあったのだと思うのですが・・・ その後その地域の公営の復興住宅に犬達と共に移り住んで現在に至ります。 しかし、その公営住宅は動物の飼育は認められていません。少し粗暴な振る舞いのSさんはやがて近所でも有名になりました。 でも回りの声などどこふく風、とばかりSさんはいつも堂々と犬達を従えて闊歩していました。 しかし、そのうちSさんは飼っている2匹のオス犬に子供を産まさせたいからもう1匹メス犬が欲しいと言うようになりました。時々ガスや電気も止まってしまうような生活の中、さらに犬を増やすこと、そしてそのメス犬に子供を産ませることに回りの人達は猛反対しました。 Sさんは一旦は納得したようでしたが、その後結局捨てられていたメスの子犬をどこからか貰い受け、その子が1才を迎える頃、再び、そのメス犬も含め自分の飼い犬達に繁殖させると言いだしたのです。 「生まれた子達をどうするの?全部飼うことも出来ないし、もらいて探すのだって難しいのに、そんな無責任に生ませてどうするつもりなのか?」 しかし、そんな回りの再三の忠告には耳も貸さず、自分では里親探しも出来ず、責任も取れないくせに、結局反対をおして知り合いのKさんが飼うメス犬と自分の所のオス犬の1匹をかけさせて無責任に子犬を生ませてしまったのです。 それがユキちゃんとその兄弟達です。 5匹の内、1匹は母犬の飼い主であるKさんのお宅に引き取られ、ユキちゃんを含め残りの4匹を乳離れした時点でSさんが引き取りました。 しかし、Sさんは、その約1ヵ月後に、今度は自分の所で飼っているメス犬に自分の所のオスをかけ、また5匹生ませたのです。 Sさんはもらいてが決まらなければ、保健所に連れて行くと言っていました。それを耳にした近所の人や犬の散歩仲間の人があまりにも勝手な言い分に激怒して、プラーナに相談して来られたのです。 相談を受けて我々は、「安易に生ませ、面倒になったら保健所に連れていく」という態度に腹が立つばかりでしたし、そんな無責任な飼い主の尻拭いはしたくはありませんでしたが、生まれた子犬に罪はありませんから、子犬のために、そして今後2度とこのようなことを行なわせないためにも、「犬達を必ず不妊手術する、もう繁殖をさせない、里親探しに自らが積極的に行動する」、以上を条件に(表面上は)あくまでもSさんに責任を持って自らが主となり里親探しをするようにさせ、我々がそれをサポートする形で、子犬達の里親探しの協力をうけおうことにしました。(実際はSさんには何も出来ないので実質我々が表面下で主導しました。) そしてユキちゃんを含めユキちゃんの兄弟達は無事プラーナから里子に出すことが出来ました。 ユキちゃんの里親さんは律儀でまじめな御家族でした。ユキちゃんの事も大変可愛がって下さいましたが、ユキちゃんが成長の過程で食べ物の好き嫌いをする時期が来た時、問題が起こってしまいました。 犬の中には、子犬から大人に成長する生後5ヶ月〜7ヶ月前後の頃、好き嫌いをするようになる子がいます。利口で繊細な子に見受けられるようです。一種の反抗期のようなものなのかもしれませんが、自己が確立される時期の精神的成長の1つの形でもあるのではないかと思います。 里親さんはユキちゃんのために、餌を変える、運動をさせる、甘やかさずに食べなかったら下げる、等ありとあらゆる努力をして何とか食べてもらおうと頑張って下さいました。動物病院で検査もしてもらいどこにも異常はなかったのにも関わらず、なお一層ユキちゃんはどんな餌にも見向きもせず、どんどん痩せ細っていってしまったのです。普段はいたって元気でノビノビと暮らし、おてんばな様子でしたし、御家族にもとても懐いていて可愛がっても頂いており、何かストレスがあるとも考えにくい状況でした。ただ頑固に好き嫌いを主張している、そんな感じでした。 里親さんから相談を受け、そういう時期である可能性があることもお話しし、訓練士さんやカウンセラー、獣医さんにも里親さんへのアドバイスを行なってもらいましたが、状況は変わらぬまま、里親さんも少しずつ自信を無くされていきました。 何度も何度も話し合いをして、そのたびに頑張って下さいましたが、ユキちゃんの体調を不安に思うあまり里親さんもノイローゼ状態に陥るようになり、最終的に限界という言葉が出てくるようになってしまいました。 そして「里親として責任を持ってもらい受けたのに、このままではユキちゃんを期待に沿えるように育てることが出来ないかもしれない。」と、何度も重ねた家族会議で出た結論を連絡してこられたのです。 この御家族が本当に一生懸命頑張って下さっていた事は充分わかっていますし、決して無責任でいい加減に結論を出された訳でもないこともわかっていました。 むしろその責任感が強すぎたゆえの結果であったのかもしれません。そういう時期かもしれないから気長にやっていこう、そんな心の大らかさがもう少しあれば、かえって良い結果を招いたのかもしれません。飼い主になるということは子育てに共通します。時には悩み、時には喜び、そうして共に成長していくのです。 でもこの御家族は生真面目さゆえ、この「時には悩む」という壁を大きなまなざしで越えようと出来なかったのかもしれません。 もうすっかりこのお宅に馴染み自分の家族として信頼しているユキちゃんの事を思うと、何とか頑張って頂きたかったけれど、そこまでユキちゃんが頑強になるのは、何か見えない、生活環境への不適合があったのかもしれないとも思え、ユキちゃんを里親さん宅から戻す事に決めました。里子としてもらわれた犬猫だけでなく御家族をも幸せにしてくれるような御縁でなければならないとも思いますし・・・ そして、ユキちゃんにとって悲しい別れの日がやってきたのです。 ユキちゃんは一旦、元々の飼い主であるSさんの元に引き取られることになりました。 そしていよいよ明日お別れの日という最後の夜、ユキちゃんは何かを察していたのか、いつも以上に御家族に甘え、決して側を離れなかったと言います。 翌日、里親さんとSさんと我々はもう日も落ちて人気の無くなった公園で待ち合わせをしました。 この公園はユキちゃんが里親さんと会った最初の場所でもありました。 ユキちゃんは我々や久しぶりに会うSさんの姿に大はしゃぎでした。 「誰より信頼する家族がいて、大好きな人達もいる」ユキちゃんは喜びを体一杯に表現していました。 最初に我々の姿を見た時、ちぎれんばかりに尻尾を振り、次に大きくひっくり返って裏返しになったゴキブリのように手足をバタバタさせて歓迎してくれました。 里親さんと我々の間を行ったり来たりし、里親さんに甘えては我々の所にも転がるように駆け寄ってくる・・・まるで「ねえねえお母さん、お父さん、今日はみんな来てくれたね。嬉しいな、嬉しいな」そう里親さんに伝えている様でした。 里親さんはそれを時々笑みを浮かべ見つめては何度も何度もユキちゃんを抱きしめました。 その抱きしめられている意味も分からず、ユキちゃんは余計にはしゃぐばかり。 胸をえぐられるような思いでした。 そして静かに里親さんは「もう行きます」と言われました。ユキちゃんが追いかけて行ってはいけないから我々はしばらくその場に残ることにし、里親さんに先に行ってもらうことにしました。 Sさんが「ユキが鳴くだろうから、立ち上がったらもう真直ぐ車に乗って行ってくれ」と告げると、里親さんは最後にユキちゃんの頭をなで「元気でいるんだよ」そうつぶやいて静かにベンチから立ち上がりました。そして振り返ることなく、恐らく涙を拭いていたのでしょう、そのまま車まで行くと静かに去っていかれました。 その姿を必死で目で追いながら、ユキちゃんはこんしんの力を込めて去っていく里親さんの元へ行こうとしました。そして「どこへ行くの?行かないで、置いていかないで」そう叫ぶように悲鳴にも似た叫び声を上げました。何度も何度も。 それをあやしながら、車が去って見えなくなるまでユキちゃんを抱きしめていましたが、ユキちゃんはもう私達の声も耳に入らないようでした。 しばらくクーンクーン鳴いていましたが、あきらめたのか、もしくはすぐ戻ってきてくれると思おうとしているのか、ユキちゃんは静かに足元に伏せてもう2度とはしゃぐことはありませんでした。 5分程して我々も公園を後にしました。ユキちゃんは里親さんが歩いた場所に残る里親さん達の匂いを必死で引っぱりながら辿っていきます。そして車の置いてあった場所まで我々を引っぱっていき、その先の匂いを一生懸命探していました。 でもその先にはもうその匂いはない。そしてその姿を必死で探してもどこにもない。 ユキちゃんは本当に切なそうにクーンクーン最後に鳴いて、後はSさんに連れられ首を落としたままトボトボと夜の街の中に去って行きました。 我々はその光景をきっと生涯忘れることはないでしょう。 誰よりも愛する、そして信頼する存在に去られる、その悲しみがどんなに深いものであったか・・・ 我々は動物管理センターに連れていかれた犬や猫、そして捨てられて置き去りに される犬猫の姿と心をユキちゃんの姿に重ねて見たような気がしました。 ユキちゃんは実際すごく痩せ細っていたので心配しましたが、Sさん宅に戻った後は普通に餌を食べました。食べ無いと兄弟達に取られてしまうので一生懸命食べていたとの事です。里親さん宅では1匹だけでしたし、時期的なこともあり、甘えてワガママをしていたのかもしれません。 しかし、あの別れ以来、里親さんからは飼い主登録の名義変更の問い合わせがあっただけで、その時にもユキちゃんの様子を尋ねても来られませんでした。悩みに悩んで決意した別れだからあえて気持ちがぐらつかないよう口に出さないようにしているようにも思えましたが、何か寂しい思いは拭えませんでした。 いずれにしろSさん宅は全く知らない場所ではなくそこは父犬や兄弟達のいる自分の育った場所だから、ユキちゃんはすぐ表面上は落ち着きを取り戻しました。 Sさんとは、引き続きユキちゃんの里親探しをしていこうと話していたのですが、我々がユキちゃんの新たな里親探しのための手配で走り回っている間に、こちらには何の相談もないまま勝手にユキちゃん達の母犬の飼い主Kに頼み込んで、ユキちゃんを里子として引き取ってもらってしまったのです。 こちらには事後報告という形で耳に入ってきたため心外でしたが、元々の所有者である母犬と父犬の飼い主同志で進められた話しであることと、そのお宅ですでにユキちゃんはとても可愛がられて、エサも沢山食べ、ノビノビと過ごさせてもらっているという話しであったため、とりあえずKに直接会って今後の相談をすることにしました。 ところが、その矢先、当会に最初にSさんの事を相談してこられた方が、ユキちゃんがK宅に引き取られた事を知って当会に連絡をしてこられたのです。 その内容はとんでもないものでした。 このKという家族は、犬をもらってきたは捨て、もらっては捨て、ということを繰り返しているとんでもない奴ららしいと言う事なのです。 ユキちゃんの母犬も捨てられてしまったようだ、との事。 ユキちゃんを含めその兄弟達がSさんの元へ引き取られてしばらくしての頃、Kがユキちゃんの母犬を公園に放置して去るのを見たそうです。 しかし、その後、その子が家まで戻ってきたため、今度はもう少し離れた場所に捨て、でも再度戻ってきたため最終的に遠くの山まで捨てに行ったらしいとの事でした。 本人達は、散歩の時、野良犬に吠え立てられ驚いて逃げてしまい行方不明になったと回りに言っていたようです。行方が分からず心配だとも言っていたそうです。 しかし、居なくなったのはユキちゃんの母犬だけではないようで、プードルのような白い犬も以前連れていたけれど最近は見ないということでした。 勿論この話しはあくまでも憶測が大部分を占めています。事実であると言い切れる証拠もありません。 しかし、そもそも、Sさんといっしょになって安易に子犬を生ませた自体、責任のある飼い主とはとても思えませんし、こちらとしては疑いは増すばかりで、そんな所にユキちゃんを置いておくのは不安です。 万が一、ユキちゃんを捨てられたりしたら大変ですから、これは一刻も早く連れ戻さねばならないと思いました。話しでは、かなりタチの悪そうな人達らしいとのことでしたが、躊躇している暇はありません。早速Kの自宅を訪ねました。 率直に噂の真偽を尋ねた所、本人達はあくまで逃げて居なくなったと言い切りましたし心配しているとも言いましたが、実際保健所や警察、動物管理センターなどに届けは出していないようでした。 管理センターや警察に届けを出すよう、強くうながしましたが、反応は今1つ。 そんな様子を見ていると、やはり捨てたからこそ、届けも出せないのではないかと思えてきます。 プードルの事も言っていました。散歩の時いなくなってその後いくら探しても見つからない、きっと誰かに盗まれたんだ、と憤慨した様子でしたが、我々にはその言葉を素直に受け取る事が出来ませんでした。 ユキちゃんに関しては、「里親になりたいと言う人が出て来ているんですが、今後どうされるおつもりなんでしょう?」と真意を聞いてみるつもりで嘘を付いて尋ねてみましたが、Kは「もう懐いているし、手放す気は無い。家で飼います。 里親希望の人には断わって下さい。」と言い張りました。 いくら、「我々が仲介として間に入っていた以上は、我々を通さずにの譲渡は困るので返して欲しい」と言ったところで、飼い主であったSさんから直接譲り受けている以上、虐待や遺棄の証拠が無い限り、こちらは飼い主の権利に強引に踏み込めない部分があり(所有権の侵害にあたる)、向こうが離さないという以上は手出しが出来ず砂を噛む思いでしたが、こうして我々が訪ねた事で彼等も我々の監視の目があることを知りヘタなことは出来ないでしょうし、もしもの時は必ずこちらに連絡してくるという確信がありました。 そこで「万が一飼えなくなったり、手に負えなくなることがあったら、必ず連絡して下さい。」と事務局の連絡先を予防線のため渡しておきました。 Kはユキちゃんの他に同腹の兄弟のメスを引き取っていますが、その子はかなり吠えたてる犬で、Kの奥さんと話している間、御主人に紐で何度も叩かれていました。そういう育て方をしているから、そんな犬になってしまったんだろうに、哀れでした。 その後、急いで動物管理センターに電話し、事情を話した上で、過去に収容された犬の中にそのような犬がいたかどうか、調べてもらうようお願いしました。その上で、今後収容された場合も連絡をもらえるよう依頼しておきました。もし、居なくなったと言われる場所以外で保護されたのであれば、追及のとっかかりを掴めるかもしれないと思ったからです。 結局調べてもらった結果、該当するような犬は居なかったとの事です。 勿論、Kからも届け等は一切出てはいませんでした。 そうしたら、それから1ヶ月も経たない内に、やはり、というか、Kから事務局に電話があったのです。 「ユキもう飼えなくなったので引き取って欲しい」 御主人が前々から心臓が悪く、3日程前から心筋梗塞の兆候が出ていると言うことです。散歩も餌作りも主人がやっているので、もう2匹は世話が出来無い、と言いましたが、心臓が悪いのが以前からの事ならば、自分が世話が出来無くなることも考え安易に子犬を生ませたり、安易に引き取るのを避けるべきなのに、やはりこういうことからも無責任さを感じざるを得ません。 でも、いずれにしろ、予防線を張っておいたのが功を成してくれました。 こちらに電話くれたから良かったようなものの、もし、我々の耳にKの噂が入っていなければ、今度はユキちゃんが捨てられることになっていたかもしれません。 向こうから引き取って欲しいと言ってくるよう仕向けたのが、結果として良い方向に進んでくれました。 しかし、このような事例は、その時々に救うだけでは何の解決にもなりません。 またどこかで拾ってくるかもしれないからです。行政や我々が飼い主を指導し、違法行為があれば検挙し、2度と動物飼育をしないよう誓約書を書かせる等しなければなりません。 でも結局、それも法律で規制出来るのにも限界がありますし、証拠が無い限りどうにもなりません。 証拠がない以上、只の予測に過ぎず、何の手出しも出来無いのがはがゆい限りで、こういう事例は1番やっかいですが、飼い主への指導を根気よく行なっていくしかないでしょう。 今回の件は、いろんな問題要素をはらんでおり、現代の無責任な飼い主達の象徴のような人達が巻き起こした事例でした。このような人達をどう指導していくのか?法律に限界がある中で、いかに無責任な人間から動物を守るか? 我々が解決していかなければならない、根深い問題です。 とにかくこうして理不尽な流れに翻弄されたユキちゃんでしたが、無事引き取れることになったものの、その時点では預かりボランティアさん達の所に空きがなくどこももう手一杯の限界状態でした。 常にこのような状態で、もうこれ以上引き取りに応じる事は、場所、人手、資金の面からも不可能な状況です。本来なら、引き取りの要望には応じることが出来ませんし、どうしてもと言う場合でも先方に預かり先の確保、健康診断等、してもらわなければならないところですが、遺棄常習犯の疑いが持たれる彼等にそんなルールは通じません。 我々は必死で預かり先の確保に奔走しました。 そして縁あってユキちゃんの事を知り、是非ユキちゃんを助けたいと名乗りをあげてくれた預かりボランティアさんが現われて下さり、直接お話しをしたその日の夜にユキちゃんを迎えにいくことになったのです。 ユキちゃんにとってKとの別れは、里親さんにもらわれる際のSさんや兄弟達との別れ、そして里親さんとの別れ、それに次ぐ3度目の別れとなりました。 K宅に着いた我々をわずかに開いた扉から最初に出迎えてくれたのはユキちゃんでした。その首にはすでに紐がかけられていました。 Kは、先日御主人に腸のポリープも見つかったため、もうこれ以上飼うのは無理だと思っていたそうで、その矢先の我々からの電話に早速今日中の引き取りを望んできましたので、我々の段取り上夜遅くの訪問となり、玄関に出て来たKの奥 さんはすでにパジャマ姿でした。 ユキちゃんの食べていた餌を袋に詰めて我々に差しだし、「里親さんが決まったら3ヶ月に1回報告の写真を送ってもらってくれる?」と言いました。ユキちゃんの行く末を気にかけているのでしょうか? Kが本当に遺棄常習犯であったのかどうかは実際にはわかりません。もしかしたら本当にユキちゃんを手放す理由が御主人の病気のためで、本当はユキちゃんを心底可愛がっていたのかもしれません。 しかし仮にそうだとしてもそれは我々には妙に違和感のある言葉に思えてしまいました。 なかなか外に出ようとせず戸惑いを見せるユキちゃんでしたが、Kに足で玄関の外に押しやられてしまいました。必死で中に戻ろうとするユキちゃんを振り切るようにKは「じゃあよろしくおねがいします」その言葉と共に扉をあっけなく閉めました。 「さあ、ユキちゃん行こうか」声をかけて促してもユキちゃんはどこに連れていかれるのか不安な表情を浮かべその場から動こうとしません。何とか声をかけながら歩き出させましたが、足取りは重く、家に戻ろうとします。 始めて見る預かりボランティアさんの姿が見えなくなった時、我々に飛びついて喜びを表わしてくれましたが、しっぽはお尻の間に固く巻き込み、おなじみのひっくり返って手足をバタバタさせる仕草も硬直してのものでした。我々に逢えたのは嬉しい、でもそれ以上に連れていかれることの不安が大きかったのでしょう。少しおしっこを漏らしてしまいました。震えてもいました。 首輪が抜けたらいけないと念のため胴輪も付け、小雨の中、車までの道を歩きだしましたが、途中何度も水たまりになっている道にしゃがみこみ連れていかれるのを抵抗するかの如く動かなくなってしまいます。何度も何度も来た道をそして家の方向を振り返り、しっぽを巻いて戻っていこうとします。 しかし、元々ユキちゃんは聞き分けの良い子で、駄々をこねるような事はありませんから、何とも言えない哀しげな目をしながらも我々に連れられ仕方なく歩くのです。その胸にある不安と再びの別れの予感・・・別れたくないのに紐で拘束されて自分の意思と関わらず引き離されていく不条理・・・またどこかに連れていかれてしまうのか・・・そんな想いで一杯だろうに、そんな時にでも仕方なく我々に素直に従うその姿が余計に不憫でした。 この子はこれで3度の別れを経験しました。そのいずれの場面にも立ち合った我々の想いもまた複雑なものでした。ユキちゃんをもういらない、と思っている飼い主なのに、ユキちゃんはそんな飼い主であっても心から慕っている。何の事情も知らずただ一方的に愛する存在から引き離される思いとはどんなものなのか・・・ ユキちゃんを紐で繋ぎ拘束して連れていく時、我々は思いました。 紐で拘束されている存在・・・ もし自分が子供で、ある日突然捕まえられて愛する両親の元から引き離され、それが今世での別れとなったとしたら、あるいは、犯罪に巻き込まれるか犯罪者にならない限り我々は通常自分の意思で自由に生きることを保障されていますが、ある日突然どこに行くのも拘束されて愛する存在や大切な場所から引き離されたら・・・ 人間社会で人間と共に生きる動物達はある意味そんな拘束された存在です。 拘束されなくなった瞬間から、自由になった瞬間から、飼い主つまり持ち主のいない存在となり救う人が現れない限り、やがて彼等は本当に囚われの身となり数日後にはその命さえゴミと同じ扱いをされて奪われてしまう。 愛するものの側にいる、そんな当り前の選択も自らの意思によって行なえない存在、そして運命を人間という他者に委ねられている存在・・・ たかが1本の紐かもしれない。けれどその紐の意味は時にはとても重たいものなのだと我々はユキちゃんを通じ知りました。 愛犬と共に散歩をする時、飼い主とその犬とを繋いでいる紐は、愛と信頼、そして守るべき存在の証しとなりますが、里親さんが去っていく時にユキちゃんが追いかけていくことを許さなかった紐と、今日こうして飼い主の元からユキちゃんを引き離したこの紐は、我々にとってはユキちゃんを守るためのものであったとしてもユキちゃんにとっては残酷なものでしかなかったのかもしれません。 その場にいた誰もが、自分達が可哀相なことをしているのではないか、とそんな思いを抱きました。 車の前まで来てユキちゃんは、里親さんの車が去ったのを悟った時と同じ、悲しみとあきらめの表情になりました。奇しくもその場所は里親さんとの別れの場所でもありました。 抱きかかえて車に乗せるとおとなしく自分から体をシートに埋め本当にお利口にしていました。 その姿を見て改めて、このユキちゃんのまるで人間のような「人の気持ちや状況を察することの出来る利口さと優しさ、そして繊細さ」を感じました。そんな子だからこそ成長期の自我の芽生えが他の子よりも極端に出たのかもしれません。 この子のそんな特別な素晴しさを3人の飼い主さん達が理解して下さらなかったのが余計に不憫に思えてならないのです。 けれど、今度こそ、きっとユキちゃんは幸せになれる、我々はそう信じています。 本当に生涯変わらぬ愛の中でその安住の地で穏やかに過ごす、そんな日がもうすぐやってくることを・・・ ユキちゃんは利口で心優しい子です。その愛情は、きっとユキちゃん本人だけでなく飼い主さんをも幸せにしてくれる、ユキちゃんはそんな子だと我々は思います。 良い御縁が彼女のもとへ1日も早くやってきますように・・・ 現在ユキちゃんを預かって下さっているボランティアさんは、本当に心優しい方です。 とても深い愛情を持っていらっしゃって、ユキちゃんは彼女の愛情によって元気を取り戻しつつあります。 しかし、近い日、我々はユキちゃんに4度目の別れを再び与えなくてはなりません。でもそれはどこかでユキちゃんを待つ本当の飼い主さんになる人との出会いの時でもあります。 でもボランティアさんは悩みました。ユキちゃんが自分に懐いてくれればくれるほどユキちゃんにとって別れが悲しいものになるのではないかと。でも我々は思います。ユキちゃんは飼い主さん達に実際は見捨てられたように見えるけど、本当は、ユキちゃんがこの世に生まれて来たのは今から本当の出会いをするであろう、誰かに出会うためであり、その人との出会いから全てが始まるのだと。 今までユキちゃんの元を去っていた人達はユキちゃんが待つ、その人ではなかっただけの事なのだと。 今はユキちゃんの不安や寂しさを癒すため、ボランティアさんの愛情が何より必要であると思います。 愛情に勝る薬はありません。そしてユキちゃんが今まで得られなかった程の愛でユキちゃんの心の隙間を埋めて、本当に元気を取り戻したユキちゃんをその人に託すことが出来れば良いと思います。 そしてその際には4度目の別れが不安と悲しみではなく希望と喜びになるように、里親さんになる方が決まったらじっくり時間をかけてボランティアさん宅に足を運んでもらい、また里親さん宅へ行った後もボランティアさんにしばらく通ってもらったり、突然の別れを与えないよう特別の配慮をしたいと思っています。 今はボランティアさんもそのつもりで惜しみない愛情でユキちゃんを支えて下さっています。 始めてボランティアさんのお宅に行った日、10月16日の夜は不安ばっかりだったユキちゃんも日毎に落ち着き表情が豊かになっていきました。 以下からはボランティアさんのユキちゃん日記に託します。 |
