「日本における動物医薬品販売業者と、動物医薬品の流れ」
1・ディーラーと呼ばれる、動物医薬品の販売業者が獣医師さんに医薬品を販売している。
2・販売業者(ディーラーもしくはプロパー)に卸している製造元(メーカー)がある。
3・日本で使用されている犬猫ワクチンの多くが輸入された外国のものである。
4・この不景気でディーラーの統合化が進み、この統合の流れが、動物医薬品の流通にも大きく影響している。
5・外資系のディーラーが自社で販売する流れがあるが、日本の動物医薬品ディーラーが生き残る為には、輸入製動物薬を代理店として販売する事が必要不可欠である。
6・ディーラーの勢力により、各都道府県で使用される医薬品が決まっている。
7・ワクチンによる副作用による報告は、獣医師と動物医薬品販売業者間だけで行われ、獣医師間でも公には、公表されていない。
8・輸入され、日本に入って来た多くの新しいワクチンは、ある一定の基準をクリアし、日本の検定に合格してはいるものの、ワクチンプログラム等の調整は取られていない。
9・日本における動物医療の情報は我々飼い主にはほとんど報告されていない。
各方面を調査しようと試みても大きな壁がある。
「消費者の気持ちー飼い主は安全を選ぶ?」
海外ではワクチンの安全性が重視され、ワクチンの追加接種の必要の是非も問われている昨今に、何故日本のワクチン業界では安全性より確実性を追求するのでしょう?
例えばワクチンを接種したにも関わらず発病したとします。個体によって、又様々な条件によってはありえる事です。大抵の飼い主はワクチン接種を受けた獣医さんで病気治療を受け、「どうしてワクチン接種を受けているのにこんなに症状が出るのですか?」と尋ねます。
実は、「ワクチンをしていたのにも関わらず病気に感染した」のでは無く、「ワクチンを接種していたから、死なずにすんだ」可能性が高いのですが、 (またその他、既にワクチンによって暴露を受けていたウイルスなので、激しい症状が出現した可能性もあります。) 最近の獣医師さんは、そのまま消費者である飼い主の質問を出入りの薬屋さんにクレームとして伝えるケースが多いように思います。薬屋さんはより確実なものを求められたと受け取るかもしれません。そしてそのクレームはそのまま発売元まで届くでしょう。そしてメーカーは消費者の声に応えるため確実性を追求します。
一方、ワクチン接種で重篤な被害に遭った場合、大抵の飼い主は、何が起こったか理解できないまま、その獣医さんへの信頼を無くし病院を変えてしまう事が多いようです。病気を防ぐためにお金をかけてワクチン接種させたのに、病気を防ぐどころか、元気だった子を病気にされてしまったのですから・・・その結果、ワクチン接種をしたその獣医さんの元へも声は届かず、当然薬屋さんや発売元へも、重篤な副作用の報告は届きにくいようです。結果、安全性の追及はおざなりになってしまいます。
安全性を選ぶか確実性を選ぶか、それはあくまでも飼い主次第ではありますが、実際の所、現在の消費者は確実性を求めがちであり、日本のワクチン業界でもそのニーズに応えるため、安全性より、確実性を追求しつつあります。
例えば、洗剤は、より洗浄力を求めてパワーアップされていくと、環境や有害成分が問題になって、洗浄力重視ではなく安全性が求められるように切り替わります。暫くしてこれでは汚れが落ちないと消費者が訴えだすと、又各社洗浄力を争いだします。このように人間とは「喉元過ぎれば熱さを忘れる」生き物のようで、ワクチンの場合においても、「確実性」を追及するのも必要かもしれませんが、それ以上に「安全」でなければならない事を理解して貰えない今の日本が嘆かわしい限りです。
(原文、『シロの家』ネットワーク / 校正・加筆・編集、プラーナ)
「日本の獣医師の現状」
獣医師は、動物における全ての分野について専門家なのでしょうか?答えは「ノー」です。獣医師さん達は、大学や大学院を卒業してから始めて小動物(犬・猫等)の
臨床体験をするのが殆どです。どこで体験するかというと、開業されたらそこで初めて体験し、勤められたら勤務先の病院であると、言われています。では、大学で何を学ばれているかというと、日本の大学の獣医学部では、牛や豚といった産業動物の衛生管理や病気の予防が中心であり、小動物に対しての授業は殆どがされていないそうです。日本における獣医療の歴史を、振り返ってみると、戦前は、軍馬の生産の為に獣医は活躍し、戦後は産業動物の繁殖と衛生管理に重点を移し、主に公衆衛生の管理、畜産、官公庁で活躍をするようになります。犬や猫といった小動物の獣医学の歴史はまだまだ浅くようやく始まったばかりとも言えます。
1986年に、日本の獣医学教育は、4年制から6年制に変わりました。アメリカ等では、獣医学教育の中に充分な割合で小動物の臨床教育があるのに対し、日本では6年制に変わったものの、4年制時と同じ事を6年掛けてやるといった、今のニーズに合っていない事をなされているようです。何故、追加の2年で臨床のカリキュラムを組まないのか?と、思われる方も多いと思いますが、これには、今の日本における獣医療の現状が大きく関わっているものと思われます。まず、大学側で今のニーズに合った授業を出来る
だけの人材や余裕が無い事が挙げられるでしょう。
また日本の獣医は国際ライセンスを持ちません。国際ライセンスとは、国際的に共通のライセンスで、一定の基準をクリアした大学教育の中で、収得出来るライセンスです。国際化の時代に入り、諸外国では対応が進んでいますが、中国・台湾・北朝鮮・韓国・日本では、国際ライセンスは今だ認められていません。国際ライセンスは、ある一定の基準を上回らなければ収得出来ないため、日本ではほとんどライセンスを取得しようとする獣医は無く、ライセンスを取るための大学側も用意されていないといった現状です。
このような事から、残念ながら日本の獣医療の現状は諸外国に比べて、決して秀でたものでは無いのです。そのためにも飼い主の側も、動物医療に対する意識レベルを上げる事が、結果として今の日本の動物医療の向上に必ず繋がるであろうことは間違いありません。
「小動物(犬猫等)の免疫学(immunology)の現状」
先にもふれたように、日本の獣医学教育の現場では、小動物の授業は殆どがなされていないようです。またワクチン(vaccine)を使用するにあたっての免疫学の授業がされているかと言うと、最近でこそ免疫学的基礎技術が普及し医療の場でも免疫学の基礎知識が要求されるように成っては来ましたが、未だに獣医学部では、なじみの薄い学部であるようです。獣医学部での授業の中に小動物の免疫学が無いため、殆どの獣医
師さん達はこれらの知識を収得されていません。牛や豚とは、明らかに違う個体種である犬や猫は、当然、遺伝子も身体(個体)の構造も免疫機構も違います。つまり、牛は牛、豚は豚、犬は犬、猫は猫なのです。しかし、現実には殆どの獣医師さんは個体種によって麻酔薬や投与薬などを変えるということすらされていないようです。また犬と猫に対する医療行為が同じである事にも疑問を感じざるを得ません。
地球上の生物を守る為には、各々の生き物が本来持ち合わせている生態防御機構を深く理解し、小動物個々の健康維持法を解明する事が不可欠であり、獣医学部も免疫学に関する知識が絶対必要であると、多くの免疫学博士が、指摘しています。
世の飼い主さんたちはワクチンについては、「素人が考えるより、獣医師にお任せした方が良い」と思っておられる方も多いでしょうが、免疫学に限って言えば、世界レベルでの確かな学術と最先端での高度な研究過程・専門知識・経験をお持ちの獣医師さんのみにお任せする方が良いかもしれません。
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