犬 糸 状 虫 症
canine filariosis
フィラリア感染の多い日本で今まで猫に注目されなかったのは、診断方法が難しく発見が困難なためだと考えられて居ます |
![]() 犬の糸状虫症(フィラリア症)と同種の寄生虫が、蚊の媒介によって感染します。 猫では稀な疾患で、寄生虫数も少ない為、感染猫の症状は一定しておらず、無症状のものから、一時的に咳・嘔吐・食欲不振などを示す例、さらに突然重篤な症状が現れたり、突然死亡する例まであります。 寄生虫数が少ない為に確定診断は難しく、また診断されても治療が困難です。 予防は可能であるため、犬でのフィラリア症の発生が多い地域では予防策を考える必要があります。 原因… 蚊の吸血時に線虫の一種である「犬糸状虫(Dirofilaria immitis)」の感染子虫(ミクロフィラリア←フィラリアの子虫の事)が猫の体内に侵入する事によって感染が成立します。 ![]() フィラリアに罹っている動物の血液中にはミクロフィラリア(フィラリアの子虫)が居ます。そのフィラリアに罹患している動物の血液を蚊が吸血する時に、ミクロフィラリアは血液と共に蚊の体内に入り込みます。 その後ミクロフィラリアは、2〜3週間の間に蚊の体内で成長し、他の動物に感染する事が出来る幼虫にまで成長します。 そしてこの蚊が猫の血液を吸血する時にその吸血口から幼虫が猫の体内に侵入し、幼虫は皮膚を通りぬけて猫の体内に入り込み、その後猫の体内で「未成熟虫」と成長し、最終寄生場所である肺動脈内に移行してそこで成熟します。 しかしながら、猫では侵入した「感染子虫」が「成熟虫(成虫)」にまで成長する率は極めて低く、また、猫1頭に寄生する成虫数も少なく、通常1〜2匹です。寄生率は地域により差はありますが、犬が50%以上に対し猫では2〜3%です。猫では犬に比較して未成熟虫や成虫(特に死滅虫体)に対する宿主である猫の生体内組織反応が強く現れる</FONT>ため、少数寄生にも関わらず激烈な症状を起こしたり致死的経過を取る事が多く、わずか1匹の虫が寿命で死んだ場合でも傷害を起こし突然死亡する事さえあります。 ![]() 猫の場合、犬とは違って無症状の場合が多く、フィラリア症の特異的な症状が乏しい事や、寄生虫数が少ない事等から、診断は極めて困難で確定診断は安易ではありません。 現在の獣医療の中での有効的な診断方法は、「免疫学的検査」「エックス線検査」「超音波検査」等であり、その検査成績を猫の飼育環境や症状と合わせて総合的に診断します。 ※猫では抗原検出キットを使った簡易血液検査ではまずフィラリアを検出する事は出来ません。(加えて、直接法や集中法も) ![]() フィラリア症の診断は極めて難しく、例え診断出来たとしても、効果的な良い治療法は無く、症状に応じた処置(対症療法)を行う事が多いのが現状です。心臓や肺動脈内に成虫が発見された場合には、外科的に虫体を取り出したり、駆虫薬を投与して虫体を死滅さしたりする方法が取られますが、いずれの方法も危険性がかなり高く、今の獣医療で出来る処置はこれが限界です。 予防はとにかく蚊に刺されない事が一番の予防となります。しかし普通の生活で全く蚊に吸血されない事も困難ですが予防方法の一つとして、犬と同じように蚊のいる間、月に1回の割合で予防薬を飲ませて予防する事も可能です。 ◆確定診断についてプラーナが思う事 猫の病気等も盛り込んで毎月発刊されている某月刊誌等でも、本症を取り上げて解りやすく説明されており、そして、「医療技術の進歩により、確定診断も可能に成って来ています。予防が可能な病気なので予防薬を」と、紹介されてますが、私共の知る限りでは確定診断はありえない話です。猫の組織反応は犬と違い、かろうじて共生出来る部分は無く、猫の生体内で本症の寄生虫が成熟虫になる事は極稀です。何故なら猫はミクロフィラリア(子虫)の侵入でさえ強烈な拒絶反応を起こし、重篤な症状に陥り突然死する事もあるからです。そのミクロフィラリアが生体内で成熟虫になり、フィラリア症と確定診断できる数になるまで猫は生命を維持出来ません。だから、ここが診断が難しいと言われる所以であるのです。 ◆予防についてプラーナが思う事 愛猫家を悩ます猫のフィラリア症。猫にとって、本症は致命的な疾病です。飼い主としてこの致命的な疾患から愛猫を守ってやりたい。それは当然思う所です。勿論これらの措置は飼い主の義務でもあるとは思っています。しかし、命(生活)の質を守る事も大切だと思うのです。 今現時点で猫のフィラリア症の予防薬としては、犬用のイベルメクチンから猫用に開発された「カルメドック チュアブル(イベルメクチン)」というお薬しかありません。 イベルメクチンとは、フィラリア症第2世代予防薬で、土壌中に含まれる「放線菌」が作る「生理活性物質」です。このお薬は通常使われる量ではフィラリアの成虫には効果が無く、ミクロフィラリアと幼虫に効果を示し、またそれら以外の寄生虫(猫回虫、猫鉤虫、などの線虫)にも効果を示します。このお薬の作用は非常に強力で、微量の投与で確実に殺虫効果をあげます。 確実に殺虫効果があがるお薬を、毎月連続投与して予防に備えるわけですが、このお薬の使用にあたり多くの獣医師さんにもお話を伺いましたが、獣医師さん達も予防薬を投与して予防に備えるかは意見の分かれる所であるようです。 ある病理医さんに本症の事をお尋ねした時のお話ですが、その先生曰く、同病院内でも出来る限りの検査をし抗原検出に有効な措置をとる努力をしているが、まず猫の場合抗原の検出は無理であろうと言われていました。 フィラリアに罹患した犬では砒素系のお薬(砒素系有機化合物)を使って駆虫をかけますが、猫がフィラリア症に罹ってしまった場合、猫に同じ処置は危険が大き過ぎるので出来ないため、犬での罹患率の多い地域では予防措置の一つとして予防薬を飲んだ方が良いと言われて居ました。 高温多湿な我が国にっぽんでは、蚊の生息も多く、猫でも予防措置を取った方が良いとは思います。しかし、予防策とういのは予防薬を飲む事だけしか無いのではなく他の予防方法もあると思うのです。これらを含めて「予防策」と考えた方が宜しいでしょう。 犬の感染率が50%以上に対し、猫の感染率は2〜3%と極めて低く、とにかく、蚊に刺されない事が最大の予防ではあるのですが、出来れば愛猫の生活環境や飼育形態に合わせた予防方法を取られる事をお薦めします。 |
協力/Felis Catus