『滋賀医科大学医学部「再生医療実験」における動物実験について』![]()
***光るES細胞を作成 再生医療スピード化*** 皮膚や神経などあらゆる細胞に分化することができるサルの胚性幹(ES)細胞にクラゲの蛍光遺伝子を組み込み、「光るサルES細胞」を作ることに成功したと、滋賀医大と田辺製薬の共同研究チームが発表した。 ES最棒に紫外線を当てれば緑色に光るため、課題になっていたES細胞の成果が瞬時にわかり、再生医療実験のスピード化に役立つという。<略> 共同チームによるとES細胞に一瞬の高圧電気を当てて細胞膜に小さな穴をあけ、そこから遺伝子を侵入させる方法を採用。 「ウイルスを使うより安全性が高く、世界でも例がない」と説明する。 現在は判別するために組織を採取して染色しているが、その手間も解消されるという。研究施設の同大医学部附属動物実験施設では新年度から西日本では最大規模となるサル800匹を使った再生医療の実験を始める予定。チーム代表の鳥居隆三・同大助教授は「移植個所で細胞が、ガン化した場合に、それがES細胞かどうか判別するなど、様々な形で応用したい」と話している。 |
滋賀医科大学医学部附属動物実験施設 鳥居 隆三 助教授殿 研究チーム・スタッフ・御関係者の皆様 拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 先生方、関係の皆様方におかれましては、日々医学の進歩のためのたゆまぬ御努力とその御功績に心より敬意を表します。 さて、早速ですが、私共は、神戸に本部を置くNPO団体、(「動物・自然保護」啓発団体) プ ラ ー ナ と申します。 この度、ぶしつけにもこのような質問書をお送りさせて頂きましたのは、新聞等で報じられました「光るサルES細胞」研究と、新年度から行なわれるという「再生医療」の実験において、実験動物としてサルが使われるということに関し、皆様方の御見解と実験の状況をお尋ねさせて頂くためです。 御存じのように、近年世界では代替法などを用い動物実験を減らしていこうという動きが活発になりつつあり、医療の場でも一線で御活躍の医師、科学者、獣医学者らが声を上げ始めています。 しかし、残念ながら現実にはまだまだ、動物の犠牲を皆無にすることは不可能であるというのが現状でしょう。 しかしまた同時に、将来的にどの生命をも犠牲にしない医療が実現するよう努めていくことも我々人間に課せられた責務であると思います。 では、現実に動物実験を減らしていくことは、今の医療技術ではどこまで可能なのか、それを探るためには、実際、世界最先端の医療の現場で動物がどのように実験に使われているのかを、我々動物愛護に関わる人間も正しく知る必要があると認識しています。 今後、このような調査を続けていくと共に、もし叶うことならば、世界の先端で命を救うために御尽力下さっているお立場にある皆様方を始めとして医療の現場に携わる方々にこそ「どの生命も犠牲にしない医療」の実現に向けての御尽力をも頂けますように懇願していきたいと思っております。 日本は世界に比べ、先進国の中にありながら動物愛護の文化が立ち遅れていると言われています。 それは医療の場においても例外ではありません。 世界に誇れる技術を持ち、世界のオピニオンリーダーとなれるべき日本だからこそ、これからは「真に全ての生きとし生けるもの、全ての生命のための医療」を日本から世界に提言していけるよう、是非にもその率先をお願い申し上げます。 何分お忙しい事は重々承知申し上げておりますが、このような趣旨を御理解頂き、別紙記載の質問事項にお答え頂きたく厚かましくもお願い申し上げる次第でございます。 何卒よろしくお願い申し上げます。 質問内容 (なるべく具体的にお答え頂けますようお願い致します。) 1、実験に使われた、もしくは使われる動物の種類。 また、何才くらいの動物が使われるのか。 2、過去、この研究において使われた実験動物の数。また年間使用数。今後の予定数。 3、使われる実験動物の入手経路。 4、動物実験の内容と、どのような状態で実験が行なわれているか。 5、実験もしくは実験に関わる医療行為の際、動物に苦痛や恐怖を与えないよう策をとられておられるか。 配慮されておられる場合はその方法を具体的にお教え下さい。 6、実験終了後の動物に対する対処。 7、実験動物の管理に対する配慮はされているか。 8、患者本人の細胞を用いた「細胞レベル」での実験や研究が一般的に確立されれば、人間とは異種である動物を用いるより正確なデーターが得られる上、動物の犠牲も無くしていく事が可能になります。 再生医療研究はその意味でも将来的に期待の持てる分野でもあるとも思いますが、その点はどうお考えになられますか。 9、実際、具体的に、動物実験を減らしていくための何らかの取り組みや努力、研究はされておられるか。 10、将来的に動物実験を無くしていくためには、具体的にどういった取り組みや研究が必要になるとお考えになるか。 11、最後に動物実験について思われること、御見解をお教え下さい。 今後、同様の調査を、先端医療の場におられる方々に対し順次行なっていく予定でおります。 他の事例と合わせ、この調査内容も今後近い内に当会ホームページにて公開させて頂きたく思いますので、御了承下さいますようお願い致します。 特別に何か問題がある場合はその理由を添えてお申し出頂きたいと思います。 プ ラ ー ナ 代表 岡 居 璃 叡 スタッフ一同 |
本年3月15日にファックスにて頂きました「再生医療実験」における動物実験に対する質問書に対しまして、以下の通り回答いたします。 なお、直ちに回答すべきところ、年度末と組織替え等に追われ、大変遅くなりました事、ご了解ください。 滋賀医科大学 動物生命科学研究センター 鳥居 隆三 Q1:実験に使われた、もしくは使われる動物の種類。また、何才くらいの動物が使われるのか。 本学が目指す再生医療研究のためのサルES細胞樹立および体外受精、顕微授精法の確立等の研究に使ってきた個体、および今後使う予定の動物種はサル類で、成熟した個体です。 Q2:過去、この研究において使われた実験動物の数。また、年間使用数。今後の予定数。 サルES細胞樹立と体外受精、顕微授精、胚移植法等の研究に材料を提供してくれたサルの延べ数は、カニクイザル24頭、ニホンザル21頭です。 この実験に関わる研究に用いる個体数は、年度によってかなり変わりますが、約15〜40頭です。今後の予定数は、採卵、採精等のドナー個体および胚移植等レシピエント個体、合わせて年間約30〜50頭を考えています。 Q3:使われる実験動物の入手経路 今までに使用したカニクイザルは、外国(ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア)から輸入された検疫済みの個体です。 またニホンザルは、有害鳥獣として捕獲され本学が譲渡を受けた個体とそれを母群として本学で繁殖し、育成した個体です。今後の実験に使用する個体は、ニホンザルでは野生の有害鳥獣捕獲個体の譲受は平成14年1月31日で終了しましたので、現在維持している個体とこれらを母群として室内で自家繁殖する個体です。カニクイザルも、当面は現在いる個体と外国からの輸入個体に依存しますが、今年からはこれらを母群として自家繁殖を進め、将来は全て自家繁殖個体を用いる予定です。 Q4:動物実験の内容と、どのような状態で実験が行なわれているか。 サルES細胞の樹立には、学術雑誌にその方法を詳細に示していますが、簡単に述べますと、成熟メス個体に卵胞刺激ホルモンを連日筋肉内投与し卵胞の発育を促した後、性腺刺激ホルモンを1回筋肉内投与後40時間目に採卵します。採卵は、全身麻酔下で、腹腔鏡を用いて卵巣を目で確認しながら1つずつ採卵します。この採卵の時間は長くても30分です。 その後、凍結保存している精子との間で体外受精あるいは顕微授精を行い、その後培養器内で約1週間培養し、胚盤胞期胚を作製し、その中の内部細胞塊からES細胞を分離します。今回このES細胞にGFP遺伝子を導入に成功しましたが、これらは全て継代維持しているES細胞を用いて、試験管内にて導入しますので、動物個体は用いていません。 Q5:実験もしくは実験に関わる医療行為の際、動物に苦痛や恐怖を与えないような策をとられておられるか。配慮されておられる場合はその方法を具体的にお教え下さい。 基本的には麻酔薬の投与によって苦痛の除去を行っています。我々の実験の中で動物個体に最も負担をかける採卵は、通常開腹手術によって卵巣から卵子を採取されますが、私共は手術による侵襲をより少なくするため、腹腔鏡(径10mm)と操作棒(径3mm)をそれぞれ挿入し、子宮と卵巣の発育卵胞、採卵部位を目で確認しながら、20Gのカテラン針を腹壁から挿入し採卵します。これによって縫合は腹腔鏡部位のみ1針の縫合で完了できます。ヒトでの採卵は通常超音波診断装置を用いて膣部穿孔法で行われますが、この方法はサルにはプローブが大きくて使えないことも理由ですが、もっと大きな問題として、卵巣穿刺の際、卵巣からの出血やその他の腹腔内の異常が確認できず、命に関わる事故が起こる危険性があることから腹腔鏡法を用いています。さらにこの腹腔鏡を用いることにより、手術時間も長くても30分以内に終了できます。 Q6:実験使用後の動物に対する対処。 採卵手術終了後は、抗生剤の投与と鎮痛剤の投与を原則として3日間行います。 また手術後は、麻酔からの覚醒の確認を怠ったことから、ケージの隅で鼻腔が塞がれて窒息した事故を過去に経験したことから、意識が完全に回復するまで頻回に観察し、赤外線ランプの使用等による保温も適時行います。最近は、手術終了後、間もなく麻酔から覚醒しますので事故は全く生じていません。なお、本実験では、実験殺はありません。 Q7:実験動物の管理に対する配慮はされているか。 日々の飼育管理において、声を掛けたり、身体の接触(毛繕い)を行う等でのコミュニケートを図る、さらにケージ内に水や玩具を入れたり、パズル式の餌箱を入れたりして、少しでも時間をつぶし、暇を持て余さないように、ストレスの発生を軽減する事、エンリッチメントにも努力しています、さらに、飼育ゲージの横にスライド式の扉を設けて2つのケージを連結し、2頭を一緒に同居させたり出来る構造にしています。 ケージの前面は、網目状ではなく、手が容易に外に出る幅広の格子状であり、我々とのふれあいも自由に出来るようにし、床は金属の丸棒ではなく、網目の塩ビコーティングしたものを用いる等、工夫はしていますが今後もさらに改造、工夫を試みる予定です。 Q8:患者本人の細胞を用いた「細胞レベル」での実験や研究が一般的に確立されれば、人間とは異種である動物を用いるより正確なデータが得られる上、動物の犠牲も無くしていくことが可能になります。再生医療研究はその意味でも将来期待のもてる分野であることとも思いますが、その点はどうお考えになられますか。 患者の体細胞を用いてクローン胚を作製し、そこからES細胞を樹立し、分化誘導して必要とする機能細胞を作れるようにするために、その方法をまず確立しなければなりません。 例えば、除核した未受精卵への体細胞の核移植において、どの様な細胞が効率よく核移植され胚盤胞期胚を作ることが出来るのか。さらに、そこから出来たES細胞は継代しても正常な染色体を維持できるのか、そして必要な細胞を効率よく分化させることが出来、分化誘導された機能細胞を移植した際、癌化や他の組織、細胞への影響は、期待される機能を本当に発現するのか、等の機能や安全性の確認は必ず必要です。そのためにはマウスやサルを用いて十分なデータを集積する必要があり、当面は動物実験は欠かすことの出来ないものと思われます。 Q9:動物実験を減らしていくための何らかの取り組みや努力、研究はされておられるか。 本学での動物実験は、3つのR(Reduction、Refinement、Replacement)への努力を行うように研究者に説明しています。即ち最小限の動物数で 最大限の成果を得るために、同様の実験が既に行われていないか否かなどインターネット等を活用して資料集積も積極的に行うことで、無駄な実験を少しでも無くす努力を行うよう指導しています。また、今までネコで行ってきた実験をラットに変える努力のような、より下等な動物への変更、さらに動物を用いないで細胞や組織を用いる実験に変えられるものは積極的に変える努力を行うように指導しています。 Q10:将来的に動物実験を無くしていくためには、どういった取り組みや研究が必要になるとお考えになるか。 各種の疾患で苦しむ患者さんが存在する限り、その排除に向けた薬物や治療法の開発は必要であり、それにはどうしても動物実験は欠くことの出来ないものと思われます。 例えば、薬物の薬理効果や毒性試験は細胞や組織に変えることが出来たとしても、実際にそれが体の中でどのような働きをするのか、副作用は、他の組織、器官等との関係は等、動物丸ごとを用いる安全性の実験は欠くことが出来ないものと思われます。ただその中でも、使用数を減らす、より下等な動物種に変える等は十分可能と思われます。また動物実験を減らす努力は勿論必要ですが、それに向けて無駄のない実験を行うために、正確な情報をより広く容易に得ることの出来るシステム作りが必要です。 Q11:最後に動物実験について思われること、ご意見をお教え下さい。 Q10で述べましたが、研究計画の段階で正確な情報をより広く容易に得るためには、詳細なデータが公表されていなければならず、その為にも学会雑誌などへ成果公表は研究者の責務です。さらに、実験計画を審議する動物実験委員会あるいは倫理委員会は開かれたものでなければならず、その構成は今のような学内の研究者と教官のみに限定するのではなく、一般社会の方を少しでも多く参加していただき、そこでの合意を得られるように、研究者は努力すべきであろうと考えます。 その一般社会の方には動物実験に異論を唱える方の参加を拒むべきではなくむしろ積極的に受け入れるべきであり、それによって動物実験の必要性がおのずと明らかになるものと思われます。本学においては、このような方向に向けて現在検討中であり、実験研究だけではなく、倫理面においても社会の合意のもとに広く開かれた大学を目指したいと考えています。 |
滋賀医科大学 動物生命科学研究センター 鳥居 隆三 殿 研究チーム・スタッフ・御関係者の皆様 この度は、御多忙の中、ぶしつけなお願いにも関わらず、「再生医療実験」における動物実験に対する質問書へ誠意ある御回答をお寄せ頂き、誠に有難うございました。 鳥居先生始め研究に携わっておられる御関係者の皆様の日々の御尽力の結果、救われる方々が沢山おられることであろうと改めて感じ入ります。 人々の健康と幸福のため、使命を持って研究されておられるそのお姿に、なおのこと一層、沢山の人々の救世主ともなられるであろう皆様方だからこそ、今後は是非にも世界に率先して人間だけでなく全ての生命への救世主にもなって頂きたいという思いを強く致しました。 確かに現状では動物実験はいたしかたないのかもしれませんが、近い将来には医学の進歩に伴い、それもいつか少しずつ変わっていくでしょう。しかし、過去ではなくこれからを見据え努力・進歩していくことも必要ですので、「変わっていく」のを、只、待つのではなく、積極的に「変えていく」ことも、また必要であるのではないかと思います。 ですから是非にも先生方に、その先駆者・リーダーになって頂きたいと思うのです。 若輩者ながら御無礼にも生意気な事を申し上げますが、全ての生きとし生けるものを愛する1人の人間として、私達は改めて心よりお願い申し上げたいと思います。 こんな想いをどうかお心の隅にでも留めて頂き、いつかその機会が与えられることがありましたら、「どの命も苦しめない真に全ての生命に優しい医療」の実現にお力添えの程を重ねがさね是非にもお願い申し上げます。 先生の、そして御関係者の皆様のさらなる御発展と御活躍を陰ながらお祈り申し上げております。 この度は本当に有難うございました。心より感謝申し上げます。 |
***2003年4月18日、実験用のサルの自家繁殖設備を備えた専用研究施設が完成したとの報道がありました。***
| サルの研究施設が完成 滋賀医大、実験用に自給へ (4月18日 京都新聞) 人間に近いサルのES細胞(胚性幹細胞)を用いて再生医療の研究を進めている滋賀医科大動物生命科学研究センター(滋賀県大津市瀬田月輪町)の新棟が完成し、18日、現地で完工式が行われた。医療研究用サルの自家繁殖設備などを備え、難病の原因究明の拠点として期待される。 ES細胞は内臓や骨などすべての組織に分化が可能な細胞で、再生医療の根幹技術として研究が進められている。とくにサルに特化した研究は同大学が進んでおり、鳥居隆三教授らは京都大再生研などとの共同研究で、2000年にサルのES細 胞樹立に成功している。 センターでは人工的に繁殖させた医療研究用のサルを最大800匹まで飼育できる。 外部から持ち込まれたサルは自然感染した病原体を持つ可能性があるため医療研究の上で支障となっていたが、自家繁殖で解消できる。また実験動物の排せつ物を施設内の処理機で完全に分解する設備も備えており、悪臭など環境へも配慮しているという。 今後、サルのES細胞を用いた再生医療研究を進めるほか、遺伝子を改変したサルを使ってアルツハイマー病など難病の原因、治療法の究明に取り組むという。 完成した新棟は地上6階建て延べ床面積約3000平方メートルで、総工費10億6000万円。式典には国内の研究者ら約140人が出席し、施設を視察した。 |