京都府立医科大学/「心臓蘇生研究」における動物実験について



新聞記事 2002年2月5日/神戸新聞

***京都府立医科大学 「停止の心臓」蘇生研究***
(倫理委員会審議へー脳死以外の移植に道)


心臓病で亡くなった人の心臓を再び機能回復させる研究計画(機能評価試験)を、京都府立医科大の北村信夫心臓血管外科学教授が、学内の医学倫理委員会(委員長・井端泰彦学長)に申請、5日午後に開かれる倫理委で審議が始まる。
ドナー不足解消のため、将来、心臓死からの心臓移植を目指す世界初の試みで、病理解剖される遺体の心臓を遺族の同意を得て用いるという。
人の死の定義にもかかわることから、是非をめぐって大きな論議を呼びそうだ。
北村教授によると、研究は心停止した遺体の心臓に血液などを成分とする特別な輸液を注入し、再び拍動するかを確かめる。さらに血液などを心臓と肺に循環させて心臓の機能がどの程度回復するかを調べる。
心臓は遺族の意向によって体外に取り出すケースと、取り出さずに実験装置を遺体に直接付けるケースがあるという。
蘇生(そせい)された心臓を再び体内に戻しても他の臓器が損傷しているため、科学上生き返ることはない。
研究では臨床応用を視野にいれ、蘇生、保存、機能評価の方法を確かめるとしている。
北村教授はこれまで、イヌを使って実験を重ねてきた。
その結果、出血多量で死んだ場合、心停止から1時間であればほとんどが心臓の機能が回復することが分かった。
さらに窒息死でも、1時間以内であれば半数以上は心臓の機能が回復したという。
北村教授は「心停止後の心臓が機能回復することが人でも確認できれば、従来は脳死提供に限られた心臓移植の選択肢が広がる」と研究の意義を説明している。
日本では現在、人の死は法律上、通常の人の死である心臓死と、臓器移植のための脳死の2つの定義がある。
いったん停止した心臓が再び機能を回復し、他の患者の体内で働くとすると、心臓死の定義に影響を与えることも考えられる。
北村教授は1998年、ほぼ同内容の研究を当時所属していた熊本大で計画していたが、同大倫理委は科学的、倫理的課題がまだ多いとして承認しなかった。




心臓蘇生研究」における動物実験に対する質問書

京都府立医科大学
心臓血管外科学教授 北村信夫殿
研究チーム・スタッフ・御関係者の皆様

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
先生方、関係の皆様方におかれましては、日々医学の進歩のためのたゆまぬ御努力とその御功績に心より敬意を表します。

さて、早速ですが、私共は、神戸に本部を置くNPO団体、(「動物・自然保護」啓発団体) プ  ラ  ー  ナ  と申します。
この度、ぶしつけにもこのような質問書をお送りさせて頂きましたのは、新聞等で報じられました心臓蘇生研究において、実験動物として犬が使われたということに関し、皆様方の御見解と実験の状況をお尋ねさせて頂くためです。
御存じのように、近年世界では代替法などを用い動物実験を減らしていこうという動きが活発になりつつあり、医療の場でも一線で御活躍の医師、科学者、獣医学者らが声を上げ始めています。
しかし、残念ながら現実にはまだまだ、動物の犠牲を皆無にすることは不可能であるというのが現状でしょう。
しかしまた同時に、将来的にどの生命をも犠牲にしない医療が実現するよう努めていくことも我々人間に課せられた責務であると思います。
では、現実に動物実験を減らしていくことは、今の医療技術ではどこまで可能なのか、それを探るためには、実際、世界最先端の医療の現場で動物がどのように実験に使われているのかを、我々動物愛護に関わる人間も正しく知る必要があると認識しています。
今後、このような調査を続けていくと共に、もし叶うことならば、世界の先端で命を救うために御尽力下さっているお立場にある皆様方を始めとして医療の現場に携わる方々にこそ「どの生命も犠牲にしない医療」の実現に向けての御尽力をも頂けますように懇願していきたいと思っております。
日本は世界に比べ、先進国の中にありながら動物愛護の文化が立ち遅れていると言われています。
それは医療の場においても例外ではありません。世界に誇れる技術を持ち、世界のオピニオンリーダーとなれるべき日本だからこそ、これからは「真に全ての生きとし生けるもの、全ての生命のための医療」を日本から世界に提言していけるよう、是非にもその率先をお願い申し上げます。
何分お忙しい事は重々承知申し上げておりますが、このような趣旨を御理解頂き、別紙記載の質問事項にお答え頂きたく厚かましくもお願い申し上げる次第でございます。
何卒よろしくお願い申し上げます。

質問内容 (なるべく具体的にお答え頂けますようお願い致します。)

1、実験に使われた動物の種類。犬であればその犬種もお教え下さい。
  また、何才くらいの動物が使われるのか。
2、過去、この研究において使われた実験動物の数。また、年間使用数。
3、使われる実験動物の入手経路。
4、動物実験の内容と、どのような状態で実験が行なわれているか。
5、実験の際、動物に苦痛や恐怖を与えないよう策をとられておられるか。
  配慮されておられる場合はその方法を具体的にお教え下さい。
6、実験終了後の動物に対する対処。
7、実験動物の管理に対する配慮はされているか。
8、動物実験を減らしていくための何らかの取り組みや努力、研究はされておられるか。
9、将来的に動物実験を無くしていくためには、どういった取り組みや研究が必要になるとお考えになるか。
10、最後に動物実験について思われること、御見解をお教え下さい。


今後、同様の調査を、先端医療の場におられる方々に対し順次行なっていく予定でおります。
他の事例と合わせ、この調査内容も当会ホームページにて公開させて頂きたく思いますので、御了承下さいますようお願い致します。
特別に何か問題がある場合はその理由を添えてお申し出頂きたいと思います。

追記
生命は素晴しいものです。それは人間であっても他の種であっても同じです。
どの種もこの地球上で自然環境に欠かせない何らかの役割を担っています。全ての生命がこの宇宙の下では等しく尊いものであるはずです。我々のポリシーのひとつに、アメリカ先住民の(医学に対する)こんな言葉があります。
『全ての答えは自然の中にある。それはどの生命をも苦しめないものである』
この言葉通り、1日も早くこの世から動物実験が無くなるように、そして、我々の医療が、真に地球と全ての生命に優しい、本当の救世主となることを、心より願っております。

プ  ラ  ー  ナ

代表   岡 居  璃 叡
スタッフ一同




京都府立医科大学心臓血管外科 北村信夫教授よりの回答


ファックスで送られてきた「心臓蘇生研究における動物実験に対する質問書」に対する回答を別紙にてファックスさせて頂きます。
内容的には詳細に書けませんでしたが、これでお許し下さいませ。

御依頼の質問に答えさせて頂きます。

1、実験に使われた動物の種類。犬であればその犬種もお教え下さい。また、何才くらいの動物が使われるのか。
雑種成犬、ビーグル犬の3ー4才、時に高齢の犬も混ざっていました。

2、過去、この研究において使われた実験動物の数。また、年間使用数。
この研究は約30年続けていました。
東京女子医大時代/週1例、年間100例程度 合計500例位
国立大阪病院時代/週1例、年間10例程度 合計30例位
熊本大学時代/週1ー2例、年間20例程度 合計50例位
京都府立医大に来てから/週1例、年間10例程度 合計20例位

3、使われる実験動物の入手経路
熊本、京都では大学研究部が実験動物業者より購入した犬。
東京女子医大と国立大阪病院時代は保健所からの購入でした。

4、動物実験の内容と、どのような状態で実験が行なわれているか
開心手術中の心筋保護法、死体心機能蘇生法、心肺標本機能維持法、心臓移植法、弁置換術その他の新しい手術手技の開発の為。
現在の京都では死体心機能蘇生法だけの使用です。

5、実験の際、動物に苦痛や恐怖を与えないよう策をとられておられるか。配慮されておられる場合はその方法を具体的にお教え下さい。
常に確実な全身麻酔下で施行していた。

6、実験終了後の動物に対する対処
死亡、実験終了後は焼却処理。
実験仲間と共に近くの寺院で年1回の実験動物慰霊会をしていました。

7、実験動物の管理に対する配慮はされているか
動物管理部で、投薬、飼育してもらっていた。

8、動物実験を減らしていくための何らかの取り組みや努力、研究はされておられるか。
この様なことは全く出来ませんでした。

9、将来的に動物実験を無くしていくためには、どういった取り組みや研究が必要になるとお考えになるか。
将来的に出来れば素晴しいことだと思います。

10、最後に動物実験について思われること、御見解をお教え下さい。
歴史的に見ても、人間の疾患治療、健康維持や延命による幸福の為には動物実験は大変やくにたっています。
私の過去の実験の結果も多くの人の幸せにつなげる事に役立ちました。
但し、使用する動物はペット動物では許されないと思いますが、動物実験用に、誕生、育てられた動物ならば実験使用も許されるべきだと考えています。
この点は食肉動物の場合と同様ではないでしょうか。

平成14年2月12日
京都府立医科大学心臓血管外科 北村信夫




                       

回答を受けてのプラーナからの要望書


京都府立医科大学
心臓血管外科学教授 北村信夫殿


この度は、御多忙の中、ぶしつけなお願いにも関わらず、迅速に御回答をお寄せ頂き、誠に有難うございました。
北村先生始め研究に携わってこられた御関係者の皆様の日々の御尽力の結果、救われた方々が沢山おられたことを改めて感じ入りました。
人々の健康と幸福のため、使命を持って人生をかけ研究されておられるそのお姿に、なおのこと一層、沢山の人々の救世主とも言える先生だからこそ是非にも世界に率先して人間だけでなく全ての生命への救世主にもなって頂きたいという思いを強く致しました。
確かに今までは医療技術の面からも動物実験はいたしかたなかったかもしれませんが、これからはそれも変わっていくでしょう。過去ではなくこれからを見据え努力・進歩していくことも必要ではないかと思います。
若輩者ながら御無礼にも生意気な事を申し上げますが、全ての生きとし生けるものを愛する1人の人間として、私達は改めて心よりお願い申し上げたいと思います。
こんな想いをどうかお心の隅にでも留めて頂き、いつかその機会が与えられることがありましたら、「どの命も苦しめない真に全ての生命に優しい医療」の実現にお力添えの程を重ねがさね是非にもお願い申し上げます。
先生の、そして御関係者の皆様のさらなる御発展と御活躍を陰ながらお祈り申し上げております。この度は本当に有難うございました。




プラーナコメント

歴史的に見ても、人間の疾患治療、健康維持や延命による幸福の為には動物実験は大変やくにたっています。
私の過去の実験の結果も多くの人の幸せにつなげる事に役立ちました。
但し、使用する動物はペット動物では許されないと思いますが、動物実験用に、誕生、育てられた動物ならば実験使用も許されるべきだと考えています。
この点は食肉動物の場合と同様ではないでしょうか。

確かに、食肉動物においても同様のことが言える部分もあります。畜産をやっていく上で、特に動物が好きな人ほど、畜産動物を屠殺することについて、自分のすることを正当化しようとして、「生まれてきた運命だ」、「人間のために畜産動物の命がある」と考える傾向があります。
そうでもしないと、正常な考え方をできなくなりそうになるのです。それはわかります。
だからといって、それで全てが許されていては、彼らを救うことはできません。
どういった立場で生まれてこようと、それは一つの命です。
また、動物実験ははたして、本当に、「大変役にたって」いるのか、研究者達の間に自己満足、自己擁護ということはないと言い切れるでしょうか。
確かに実験をして得た結果が役に立ったのかもしれませんが、それは本当に動物実験をしなければ得られない答えだったのでしょうか。絶対に命を犠牲にしなければならなかったのでしょうか。
その他の方法は現代医学の場では絶対に存在しないのでしょうか。そして、そこまでして得た答えは、果たして本当に「完全な」答えなのでしょうか。
なぜペット動物では許されないのに、動物実験用に育てられた動物ならば許されると考えられたのか。
この考えでは、同じ命が、生まれた環境によって全く別物のように差別されているのではないでしょうか。
また、ペット動物は許されないとありますが、飼い主によって保健所に持ち込まれ、払い下げで動物実験用に流された犬猫はどうなるのでしょう。彼等は、ペット動物であったのです。
飼い主がいなくなって実験動物となる運命を与えられた瞬間から許されるということなのでしょうか。
我々は、実験動物だから良い、のではなく、どの命であっても、尊厳が求められるべきであると思います。
ペット動物であろうが、実験動物であろうが、皆感情を持ち、痛みや恐怖、苦痛を感じることに変わりありません。
ごく当り前な事が、医学の発展という大義名分の元、ねじまげられて自己納得されているように思えて、残念でした。
研究者達の間にある、このような命の差別化の感覚がなくならない限り、本当の問題解決にはならないのではないかと感じました。






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