ある日、忽然と猫が消える。「(犬)猫とり」に御用心

猫捕りとは、猫を捕まえて三味線の皮革業者や実験動物取り扱い業者に流している捕獲業者のことです。
動物愛護の世論により保健所に持ち込まれた犬猫の払い下げが廃止になりつつあるため、こういった業者が多発しています。
主に、夜中に捕獲箱を仕掛け、明け方に回収するという方法がとられています。
野良猫は傷があり商品価値が低いため、狙っているのは飼い猫の場合も多く、首輪をしていても安心できません。また庭につないでいるおとなしい犬などを、そのまま盗んでいくようなことも中にはあるようです。このような窃盗行為は現行犯でないと検挙が困難になる場合もあるため、飼い主自身が自衛するしかありません。
また、雑誌や情報誌の里親募集の広告を見て、里親になるふりをして犬や猫をだまし取ったりする「騙しとり」もあります。
一度取られた犬や猫は二度と戻ってきませんので注意が必要です。

「(犬)猫獲り」と「(犬)猫捕り」って?
現在、「(犬)猫とり」が非常に増えていて被害も多発しています。「(犬)猫とり」とは、大きく分けて2種類あります。
里親になるふりをして猫(犬)を騙しとり、実験動物取り扱い業者に流す「(犬)猫獲り」と、町に捕獲箱などを仕掛け、野良猫や飼い猫を捕獲し、捕えた猫をすぐ殺害した上、三味線の皮革業者などに流す「(犬)猫捕り」です。1匹いくらかで取り引きされ、背後に大がかりな組織がいくつかあるようです。

騙し獲りの「(犬)猫獲り」とは
情報誌や新聞、インターネットの「犬猫もらってください」の欄に情報を載せている人に電話をかけ、里親になりたいと申し出て、猫や犬を騙し獲ります。
また、動物病院やペットショップ、動物愛護団体で里親探しをしている犬猫を騙し獲る場合もあります。
実際、コンタクトをとってきて里親になるふりをするのは、主にアルバイトでやっている人達です。若い人から年配まで、女性も男性もいますし、家族ぐるみの場合も多いです。赤ん坊を連れた若い女性もいます。
彼等は最初は人当たりも良く、いいことばかり言うので、見極めは大変難しいですが、いくつかの防御方法がありますので、里親探しをなさる方は「里親情報」の防御マニュアルの項目を御参考になさって下さい。
里親になると偽り騙し獲るという行為は詐欺であり、れっきとした犯罪です。

騙し獲られた犬猫はどうなる?
動物実験取り扱い業者に渡った犬猫は、一部の実験施設に流されます。
大手大学や製薬会社などでは、完全な無菌状態の施設内で産まれ育った実験用の動物を主に使いますが、これは、費用もかかるため、大学では教授クラス、また、大手企業に限られるようです。
それ以外の研究者や学生たちに騙し獲られた犬猫が渡っている可能性があります。
また、騙し獲りが必ずしも、実験動物取り扱い業者に流されるとは限らず、三味線の皮革業者関連の者も関わっている場合があるようです。
その他、真偽の程は定かではありませんが、集めた犬猫を用途に分けて実験や三味線に振り分け、いずれにも使えそうにない犬猫を動物園の肉食獣の餌などに流す組織もあるようです。また一部の国では犬猫を食材としていることもあり、国内でも一部でそのような犬猫を食材として使う所もあるようです。

町の犬猫を捕獲する「(犬)猫捕り」とは
阪神淡路大震災の後、阪神間で「猫捕り」の被害が多発しました。
震災によって置き去りにされたり捨てられた犬猫が増え、それに猫獲り業者が目をつけたのでしょう。
一時、阪神間のあちこちで、突然沢山いた猫がごっそり居なくなったり、深夜に黒い捕獲箱が仕掛けられているのが目撃されています。
猫獲りは主に捕獲箱を用い猫を捕えます。これは長方形の木箱で、中にマタタビのようなものを入れてあり、猫が箱の中に入ると、入り口が閉まるようになっています。(暗闇で目立たないように黒塗の箱である場合が多い)
日中、猫が居そうな場所に目印(空き缶など。目印用に銘柄を決めている場合もある。猫の数と同じだけの缶を置く。その他、漫画本、スポーツ新聞など。)を置いておき、深夜目立たぬ草むらや建物の陰に捕獲箱を仕掛け、明け方に回収をしに来ます。
また最近は目につく捕獲箱の使用を避け、人慣れした猫を網や素手で直接捕まえたり、地引き網などを使う事もあるようです。
この捕獲型の場合の目的は三味線である事が多いようですが、何も猫だけがターゲットではありません。
高級な三味線は猫の皮が使われていますが、練習用の安価な三味線には犬の皮も使われます。
野良犬や迷い犬、また庭にくくられたおとなしい犬も被害に遭う事があります。
また実験動物として使う事が目的の場合もあり、そんな時は犬猫共に被害に遭う可能性があるでしょう。

「猫捕り」に捕えられた猫はどうなるか
捕えた猫はすぐ殺し、皮革業者に流します。しかし、全てが三味線に使えるとは限りません。若くて傷の無い猫や三味線に好まれる柄の猫などは皮革業者に引き取られますが、それはほんの一部で、ほとんどは三味線には使えないと言います。
では使えない猫をどうするのか?以前から一部中華料理の食材や動物園の肉食獣の餌に流されるという噂がありますが、実際はその実態は定かではありません。
しかし昔は確かに、三味線に使えない猫を動物園関係の施設に肉食獣の餌として流していたこともあったそうです。バラバラにして正規の餌に混ぜて納入した場合、施設でもそのチェックは難しく、知らずに使っていた場合もある他、業者とつるんでいた施設もあったはずだとの事です。
また自然に近い形で飼育されている一部の動物園の肉食獣に、野生の本能を失わせない様、生き餌として、業者から仕入れた猫や犬を生きたまま襲わせるという噂もあります。それが過去の事なのか、現在の事なのか、事実なのか、ただの噂話しなのか、実際の所、真偽の定かで無い話しではありますが、目撃したという噂話は絶えることが無いようです。
その噂の中には、猫捕りによって捕えられた猫だけでなく、ペットショップで売れ残った子犬や子猫を専門に買い取る業者からも納入されているという話しもあります。
一部の心無いブリーダーが商品にならない子犬や子猫を業者と結託して卸している疑いもあるとのです。
以上はあくまでも、昔から囁かれている噂に過ぎませんが、もし仮にこれが万が一でもどこかで行なわれている事実だとしたら、こんな哀しいことはありません。
本当にこれらが馬鹿げた只の噂であることを祈るばかりです。


「(犬)猫捕り」防御方法
捕獲箱を仕掛ける時は目印のようなものを置くことがあることから、不審な空き缶や雑誌を見つけたら廃棄して下さい。
また捕獲箱を見つけたら、出来るだけ証拠写真を撮ります。
捕獲箱を見つけても決して1人で回収に来る業者を待ち伏せしたりせず、必ず、警察に通報して来てもらう様にして下さい。複数で対峙することを絶対守って下さい。
警察官立会の元、捕獲箱に入っている猫を確認します。
その中に飼い猫がいて、飼い主が訴えれば、窃盗罪が適用されます。猫の写真も撮っておきます。
応援の人を頼めない時や警察が来てくれない場合は、箱を開け入っている猫を逃がして下さい。
出来るなら、この場合も写真だけは撮っておきたいものですが、カメラを取りに行っている間に業者が来ても困りますので、その時は、猫の救出を第一にして下さい。
その後、捕獲箱を証拠として警察に持って行きます。そして、猫捕りが出た事を地域の人に知ってもらうため、ポスターなどを作り、注意してもらうようにします。(ポスターに個人名や連絡先を明記しないように注意して下さい)
不審な人物や車両を目撃した場合は警察に通報します。
又最近、捕獲箱は目につくため人慣れした猫を直接捕獲する方法なども場合に応じて用いられているようです。こうなると、いつどこに現れるかわからないので、防衛するのも大変難しくなります。
こんな時のためにも、普段から地域の人と協力しあい、地域全体で防衛していけるよう努める事が何より肝心です。

法的対処は?
昭和48年に制定された「動物の保護及び管理に関する法律」(「動物管理法」)が、2000年12月より「動物の愛護及び管理に関する法律」(「動物愛護法」)と名称も変わり新たに改正され施行されるようになりました。
この新法では、虐待者などに対する罰則も強化されています。
例えば、「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」とあり、3万円以下の罰金でしかなかった動物管理法に比べ、懲役刑にもなるという厳しい内容です。
今までの「動物管理法」は、3万円以下の罰金とはされていても、ほとんど「おとがめなし」に限りなく近い「ザル法」であった部分もあり、残念ながら動物を守るという意味ではあまり効力が無かったと言えます。ですから、「(犬)猫とり」の被害に対しても、この「動物管理法」では、何も出来無いに等しかったのです。ですから民法を適応させるしか方法がありませんでした。
しかし、日本の法律では、動物はモノ扱いでしか無い部分もあり、「飼い主の所有財産」を守る、という観点でしか民法では取り締まりは出来ません。
具体的には、飼い犬、飼い猫に限り、飼い主の所有物として「所有財産」と認められ、そこに「所有権」が発生するため、それを侵害する行為は、民法上の不法行為にあたるというものです。
「(犬)猫とり」にとられた場合も「所有権の侵害」もしくは「窃盗罪」の適応に限られていました。
しかし、野良猫(犬)は所有者が居ないため、なかなか窃盗罪を適用するのが難しく法律で取り締まる事にも限界がありました。猫捕りを現行犯で捕まえても、捕えた猫の中に飼い猫が居ないと結局不起訴になってしまう可能性も高かったのです。「動物の命を守る」というより、「飼い主の所有財産」を守る、という、人間のための法律であるがゆえの理不尽さが拭い去れませんでした。
ですから、この「動物愛護法」の施行は本当に待ち望まれていたものでした。

では、この「動物愛護法」が施行された現在の法的対処はどうなのでしょう。
まず、以下は先出の民法上の不法行為にあたりますので、同じです。
・飼い猫飼い犬は飼い主の所有物となりこれを猫捕りがとった場合は窃盗罪になります。
・野良犬猫であっても餌をやり世話をしていた場合、世話をしていた人間の所有物と見なされる場合もあり、そうなると同じく、所有権の侵害、窃盗罪が適応されます。
・また基本的に猫の捕獲は禁じられています。(猫とりに関わらず行政、市民であっても) これは飼い猫を外に出している飼い主もいるため、むやみに猫を捕獲することは、その中に飼い猫が含まれて入る場合もあり、所有権の侵害、窃盗罪にあたる可能性があるためです。
・里親になるフリをして騙しとり、殺害や虐待、実験動物取扱業者への納入を行なった場合は、他の目的のために事実を隠して、騙し取る訳ですから、詐欺になります。
また、里親になり生涯大切と飼うという約束を交した契約書があれば、契約違反として、詐欺罪の適応もしやすくなります。
次に、「動物愛護法」に基づいた判断として、
・騙し取られた後、虐待や殺害が行なわれた場合、「動物の愛護及び管理に関する法律」第27条に基づき検挙され、取り調べの上、逮捕、そして懲役もしくは罰金刑に処されます。
例えば、三味線の皮革業者に納入するため、入手後すぐに殺害された場合、状況によって上記を適応出来るのではないかと思います。
また、捕獲型の猫とりの場合、飼い猫・野良猫に限らず、犬や猫は保護動物にあたりますので、殺害するための捕獲であるならば、これも状況により動物愛護法を適応可能かと思います。
但し、どの法律を適応出来るのかは、その時々の事例によって状況も微妙に違い、解釈も変わる可能性があるため、一概に言えるものではありません。
また、期待される「動物愛護法」ではありますが、実質は2001年からの施行であり、まだまだこの新法による適応例がありません。そのため我々も、そして我々だけでなく警察を含む行政も、前例が無いだけに手探りなのです。
改正後の内容で、どこまで、この様な業者を取り締まる事が出来るのか、実際今はまだ未知数の部分もあり、今後、行政や我々が布石を作りあげていかなければならないものであるとは思いますが、せっかく出来たこの法律を、真に動物達を守るための礎に出来るよう、国民皆で努力して、大切な命を救っていく他ないでしょう。


実際に騙しとりの被害を防ぐためのマニュアルや、その他の情報、また、詳しい里親探しの方法や里親さんの選び方に関しては、『里親情報』をご覧下さい。
(誓約書の見本もあります)


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